2010-06-17

先住者

草取り作業の前々日、スタッフで道路や畑周辺の草刈りをした。

当日でもいいのだが、せっかく来て頂くのだから、と金曜日の早朝6時から草刈り機を背負って作業を開始した。

朝が苦手な私だが、いざ起きて畑にやってくると気持ちがいいモンだ。

ちょっと作業の手を休めてみる。

東京特許許可局!

東京特許許可局!

朝の心地よい風のなか、誰かが早口言葉を連呼している。

トーキョートッキョキョカキョク!

そういう部署の役所は無い。

この声、ホトトギスの声。

このあたりの林にはホトトギスが生息していて、澄んだ空気がじっとしている早朝、この声がどこからともなく聞こえてくる。

夜には、フクロウの声も聞こえる。


芋の苗さしの時、ビニールマルチに足跡を残していたのはニホンキジ。そういう自然のなかにある自分を感じた時、この豊かさは金では買えないな~と、ここ田原(たばら)に生まれ育ち、住み着いていることに幸せを感じるのである。


 
隣の畑との境界になっているのり面(斜めの傾斜になっているところ)をテシマ1号と岸野会長が草刈りをしていた時のこと。


草を刈っているといきなり茂みから雌キジが現れ、草刈りをする岸野に敵意を表し威嚇した。

鶏よりも一回り小さな雌キジが人間に向かったとて勝ち目がないのはキジにも十分分かっている。

ここに棲むキジ夫婦、よく芋畑の近くに二羽で現れては、仲むつまじい様子を見せていた。

しかし、どこに棲んでいるのかは謎で、多分、畑の北にあるヤブらへんに巣があるんだろうと勝手に思っていた。

人間に、しかもブンブンと大きな音を立てて草をなぎ倒していく得体の知れない物を背負った大男に非力な雌キジが一歩も引かず立ち向かったのにはワケがあった。


草むらの中にはキジ夫婦の巣があった。


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え?分からないって?


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彼女が命を賭けて守ろうとしたもの。

それは9個の卵だった。


夫婦で巣を設け、愛を育み、卵を温める。

平穏で幸せな時間をいきなりある朝声のでかいおっさんにぶちこわされそうになったのだ。


道路側の草を刈り終え、みんなで打ち合わせをしようと寄った時に卵のことを聞いた。


会長「食おうか。」



・・・・。



だめー!



絶対ダメだ。

草を刈ってしまったのは仕方がない。

恐ろしかったのだろう。

結局、母キジはどこかへ逃げてしまい、姿が見えない。

かわいそうに。

何とか彼らの営みを保全してあげたい。

とりあえず、刈られた草で目立たないように巣を隠した。



母キジが卵を放棄してしまったらどうしよう。


カラスやイタチに盗られたらどうしよう。

そうだ!もし、卵を温めなかったら俺が孵化してあげよう!

どこか養鶏場かどこかに行けば孵卵器貸してくれるだろう。

雛になって、自分でエサがとれるようになったら野に返してあげよう。


・・・。


そんな簡単にいくんだろうか・・。

うううううん。困った困った。


その日、仕事に行ってもずっと卵のことを考えた。


仕事が終わると自宅には戻らずねキジの巣に直行した。


恐る恐る巣を除いてみると。


あ!いたいた!



保護色でまわりにとけ込んだ母キジがしっかりと卵を抱いていた。


雄のキジは鮮やかな色で尾びれがピーンとしてかっこよいが、雌は地味なまわりの枯れ草でカムフラージュされる茶の斑模様をしている。

よかった。よかった!


でも、これほど巣が露わになっているとそのうちカラスに盗られてしまう。

もともと巣を隠していた草むらは俺たちが刈ってしまったし。

カラス対策は、ぶどう栽培では必須である。

一年間かけて手塩にかけたぶどうでもちょっと気を抜いたすきにカラスの勘三郎が食っていってしまう。


カラス除けには方法がいくつかある。

①カラスが嫌いな臭いをかざす。②カラスが嫌いな鳴き声を流し続ける。③カラスが入れないように防鳥ネットを張る。④筋糸を何本か立体的に張りちらちらさせる。


そのほか、ショッキングな方法として、⑤カラスの死骸を晒す。等がある。

この場合、臭いと音は、キジ自体がおびえてしまうし、防鳥ネットはキジもシャットダウンしてしまうので×。


カラスの死骸なんてそうそう手に入る代物ではない。

筋糸作戦でいこう!

キジの巣の上方に数本ちょっと色が付いた筋糸を張る。

上空からカラスが見れば、何だか分からないけどちらちらとした糸が見え、何だか分からない警戒心を抱く。


もし、近寄ってもそういうよく分からないものが羽根に当たったりすることにさらに警戒する、というもの。

幸い、キジはあまり飛ばずに足で歩いていることが専らだから上空の筋糸は気にならない。


竹を切ってきて、四方に立て、黄色の蛍光が入った筋糸を段違いに張った。

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草取り当日、嬉しいモンだから、集まった会員みんなにキジの話をしては、遠くから巣の所在を知らせた。


が、やはり皆さんどこに保護色の母キジがいるのか分からない。

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彼らが自然に備えた力とはすごいものだな。

巣の所在を知らなければ、四本の竹の棒に張られた筋糸は、一体何のまじないなんだろうと、不可思議に写るに違いない。


これでカラスに警戒させておいて孵化を待とう。

そうこうしている間にまわりの草がまた育って隠してくれるだろう。

このキジは、何代も前からこのあたりに棲み、ずっと生命の営みを続けてきた。


俺たちの方が新参なんだから、これくらいの配慮をさせてもらってもバチは当たらないのである。
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2010-06-11

応急処置

小麦の収穫真っ盛りである。


今週末から梅雨入りの公算が高まったため、農家は小麦の収穫におおわらわだ。


ちょっと、収穫作業にお邪魔して作業を見ていた。


見回すと麦刈りした田んぼに刈りのこしの穂が一本ひょろりと立っている。


人間は、こういうのを見ると放っておけない生き物である。




近寄っていって、素手で引っ張ってみた。





あ。



いてて。

おおわら
葉の縁にあるギザギザで切ってしまったようだ。



見ると切り口から赤い血が出てきた。



手に持っている調査用紙を汚したくない。


とっさに指を口に持っていき、血を吸った。


いくら吸っても、血は後から後から出てきて止まらない。




ううう。


このままでは出血多量で死んでしまうぞ。


当たりを見回したが、都合よく絆創膏が落ちているわけもなく、代用になりそうなものもなし。




困った…。




あ!




そうだ。フツ。


道の傍らにフツを探した。



私の住んでいる地域ではヨモギをフツと呼ぶ。



ヨモギ餅はフツ餅だ。



若葉をむしって、手のひらで軽く揉む。


汁が滲んだところで傷口に塗り込む。


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あら不思議!


出血はピタリと止まった。



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この応急処置って私の年代がギリなのかもしれないな、などとしばし自分の野性味に酔いしれる。



以前、ブドウの仕事で持っていたハサミを足に落とし負傷したおばちゃんがヨモギを探したけど見あたらず、タバコをすり込んで消毒をした。


これは強者。


今日は一日外にいたため、襟首が日焼けで真っ赤になってしまった。


そう言う時は、これ。アロエ。


玄関の鉢植えから葉肉をポキンと折って、中の葉肉のぷるぷるしたところを塗り込んだ。



ちょっとだけ、自然に身を置き、自然と共存したな、などと思う。



むしり取られたヨモギやアロエにとっては、共存もへったくれも無いのかもしれないな。ははは。ごめん。





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しま・しま

Author:しま・しま
土からつくるここだけ芋焼酎「たばらそだちプロジェクト」を立ち上げました。土と食、命がつながるといいなと思います。

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