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2010-12-21

底にあるもの

今朝、友達から「読売新聞に載ってたよ」と電話を貰った。

そうか。そうだな。防府読売マラソンなんだから、読売新聞に結果が載っている。


新聞をめくり、大会結果のページを見てみる。

しましまひろししましまひろし・・・・・。

あ!あった!名前と順位、タイムが載っていた。

山口県防府市、防府読売マラソン。

自分なりに満足のいく結果だった。


自宅から防府の会場までは約2時間。

会場へは10時過ぎに着いた。前日入りしている友人のシロノさんとは選手控え室になっている体育館で落ち合った。


「昨日、乗ってから気づいたんですけど、私生まれて初めて新幹線に乗りました。速いな~と思いました。」

シロノさん。穏やかで自分だけのゆったりとした流れを持った人。それでいて、この間の下関マラソンでは3時間25分で完走した。フルマラソン歴は今回で3回目。

マラソンに誘ったのは私だが、下関ではぶち抜かれてしまった。

くそう。マラソンは自分との戦いである。ではあるのだが、そういう一応先輩の意地もスパイスとして持ちつつ、この1ヶ月走ってきた。

負けるもんかよ。


会場に着くと、いつもの大会とは雰囲気が違うことに気づいた。


みんなのマジ度が全然違う。


控え室には体力を温存するためだろうか、なるべく体を動かさずに横になっている2人がぼそぼそとコースの話をしているかと思えば、それはそれは入念にストレッチをしている人。ミイラ男のようにテーピングをしている人。

みんな真剣そのもの。


一様にみんなスリムでカリッとしている。どの人も走ればかなり速いんだろうなという感じががんがん伝わってくる。

全くあそびがないのだ。


そういう中に自分がいることに少しだけ酔った。


それからいつものレースならば必ずいるコスプレや着ぐるみの選手が見あたらない。


みんなマジだからに他ならない。


会場を見回していると、髪の毛の二つだんごにかわいいチャイナ風のリボンを付けた女性を発見。



これほどにアドレナリンの臭いが支配する雰囲気の中で、ピラピラとした力の抜けた出で立ちは違和感そのものだった。


あとで聞いたのだが、彼女は女子の部でダントツトップだったらしい。


ダントツなんだったら話は別だ。ピラピラする資格がある。あのピラピラ感はそういう自信の表れでもあったんだなと妙に感心した。





軽くアップをし、着替えてからスタート地点に向かった。


ゼッケンの都合でシロノさんは少し前。


時計を合わせてはい1、2のスタート!

予想通り、最初は混雑して思うように前に抜け出ることが出来ない。


ストレスに感じながらも、焦らず無理せず流れに任せた。


どうしても混雑するのでちょっと強引に前に出ようとすると前走者のひじ鉄が飛んでくる。

いてて。やっぱり無理しないでおこう。


前回の下関マラソンでの失敗は、前半実力以上のハイペースで走ったことで後半ペース管理が出来なくなったことだ。


今回はとにかく抑えていく。特に前半は抑えることを肝に銘じていた。


5キロ地点で時計を見ると24分ジャスト。


少し遅いようだがスタートのロスと混雑による抑制を考えると、いいペース。むしろ速いくらいだ。おそらく、22分半か40秒くらいのペースだろう。


息はまったく平常な感じで乱れがない。足にも何も障害は無し。


このままでいい。



6キロあたりでシロノさんの後ろ姿を見つけた。


追い越しざまに一声掛けそのまま一緒に行こうかとも思ったが、そこでペースを変えたくなかったのでそのまま先に行った。


10キロ。


体調に変化はない。これまでのマラソンでこんなにコンディションよく10キロを迎えたことはない。いいペースだ。いける!いけるぞ!


少し色気が出そうになったが、ここはがまん。


がまん。がまん。



20キロ地点。


まだ、ペースは保てている。体調もいい。まだスピードを上げようと思えば上げられる。

少し、速くしてみようか・・・・。


サブ3のたかはしさんの声が聞こえた。


35キロまで何も支障なく行けて初めて最後まで走りきれる。マラソンの折り返しは35キロだ。


そうだな。このままのペースで最後まで行けたら3時間10分。


それでも十分なんだから、ここは焦らずにこのまま行こう。35キロで余力があるのならば、そこから一気に出し切ったらいい。


今はがまん。がまん。がまん。がまん。



今回のレースの課題は、後半のスタミナ切れだ。スタミナを付けられるよう30キロの持久走等の練習をやった。それから作戦をもう一つ。


レース中のエネルギー補給である。


なるべく体内の脂肪が燃えやすくなるようには練習しているが、フルマラソンで消費されるエネルギーは2500kcal。どうしても途中で破綻を来す。レース中のエネルギー切れが後半に失速した要因だとすれば、答は簡単。


補給すればいい。


ウエストポーチにゼリー飲料を入れ、携帯して走った。


持ち運び安いような小さなパッケージのものを買ったが、本番いきなり飲んでおえおえな味だったらパニックになってしまうので、味見がてら3日前の練習で飲んでみた。


濃い。


飲んだら、口の中がもにゃもにゃになる。


まあ、少ない中にエネルギーを詰め込むとこういう味になるんだな、と思うと味や食感は譲るしかない。


エイドポイントの前に飲んで水で流し込む作戦。


20キロ地点を過ぎてから、手際よくウエストポーチから出し腹に流し込んだ。


口に滞留させるとまたもにゃもにゃになるので喉に直接流し込んだが、こやつ、胃通しのバリウム並みに腹の中で自己主張をし続けた。


水!水!水ー!


エイドポイントは思っていたより遠かったので、しばし悶絶の思いを喫しながら走った。


水で流し込んでエネルギーチャージ完了!


25キロまではペースを管理することが出来た。


前回、20キロで崩れたのを思えば、ペース管理できる距離が5キロ伸びたのは練習の成果だな。


ぼんやり思っていると、心拍数が落ちていることに気づいた。


前回のレースから心拍計付きの時計で心拍数という客観的な数字で自分を見ている。


マラソンを走ると気づくことがある。


前半は息が苦しかったりして心肺がペースの制約になっているが、後半になるにつれ、足に疲労が現われてくる。足が動かなくなった分だけ逆に心肺は楽になり、心拍数も落ちてくる。


このバランスの取り方が、今回のスタミナ維持の大きな鍵だ。

前半ペースを抑えて心肺的にイーブンにすることで、後半のペースダウンを食い止めるのだ。


これまで最大心拍数の89%くらいだったのが、25キロ地点を過ぎたあたりで87%くらいまで落ちてきた。

気づいてから、意識してペースを上げようとしたが自分が感じないところで足が疲労しているのだろう。ラップを見ても5キロで1分、1キロ12秒ダウンしていた。


ここからはこれまでとは逆のがまんが必要だ。



半分は過ぎたが、まだ先は長い。きついけど、このレースに出るまでに費やした時間や汗を考えろ。あとほんの1時間ちょいじゃないか。

がんばれ。ここでがんばらないでどうする。


がまん。がまん。がまん。がまん。


30キロからはキロ5分近くにまでペースダウンをしてしまったが、ここまで来たのにあきらめるわけにはいかない。

下関では3時間30分の壁を前に、この時点で折れてしまった。


折れるか。負けるかよ!くそう。


とにかく足を前に進めた。


30キロ地点で再びエネルギーチャージ。


沿道の妻から手渡し。今度は水分を多く含んだ飲みやすいタイプ。


半分飲んで捨てようかとも思ったが失礼なことをしてはいけないと思いとどまり、ウエストポーチにしまった。


35キロを過ぎたあたりから、手元の時間と距離が気になり出す。


3時間30分を切るには、キロ6分まで落としても大丈夫だぞ。

怠け者の私が言う。


おいおい、このペースを死守ずれば、20分切れるかも知れないんだぞ。

我に返る。下関ではこの俺に負けた。

「あと4キロ」という掲示の時点で3時間20分完走に13秒の借金。


くそう!くそう!くそう!がまん!がまん!がまんだー!


もう、負けない。


フォームを立て直し、まっすぐ走る。


3キロ、2キロ。


競技場が見えてきた。


息づかいはもう、人間のものではなくなっていた。


ロバの声帯模写をしながら、ただ足を進めた。


あと少し。あと少しで終わる!


スタートの時は思うように進めず疎ましかったトラックがやけに広く、ゴールまでの道のりは長かった。


もうゴールしか見えない。


最後ぐらいかっこよく走ってゴールしたけど、もう、体裁なんてかまっていられない。


がんばってがんばってがんばってゴールした。


タイムは分からないが、「勝った」そう思った。

自然と両手を青空高く上げ、ガッツポーズになっていた。ガッツポーズって本能から自然と成り立つ行動なんだな。


そのままテントに行き、記録を出して貰った。


見ると3時間19分53秒。


ぴかぴかに光る時間。全てが吹き飛んだ。


ありがとう。ありがとう。ありがとう。ありがとう。


軽くストレッチをしようとしたが、あちこちが痙りそうになって出来なかった。


出し切ったな。よかった。ほんとうにありがとう。


号外を貰って読んでいると、けが人を収容する収容車が横を通った。

妻が何か言っている。


耳にIpodを付けたままにしていたので聞こえず、収容車が通ったねとかそういうことだろうと早合点して「30キロ過ぎてから倒れている人が多かったな~。たくさんいたから収容の人も大変だ」と間の抜けた返答をした。


「ちがうちがう!シロノさんが収容車に乗ってたよ!」


えー!


6キロ地点で会ったっきりだったシロノさん。後半私がペースダウンした時に追いつくかも知れないとちらちら思っていた。


収容車に・・・。


ともかく行ってみると、あたりは収容された人達で野戦病院のようになっていた。

そのなかにシロノさんが幽霊のように立っているのを見つけた。


どどど、どうしたの!


「37キロあたりで貧血みたいになって倒れてしまいました」


顔には生気が無く、立っているのがやっとだった。


脇に座らせて、飲み物をあげた。


「貧血みたいになって倒れたんです。10分くらい休んだら行けるかもしれないと思ったんですが、やめました」


そうか。残念だったろう。


いつも明るいシロノさんは疲労と失意でがっくりと肩を落としていた。


「しましまさんはどうだったですか?」

これほどに落ち込んでいる人を前に喜んでみせるのは気がひけたので、タイムだけ伝えた。


にわかにシロノさんの顔が明るくなった。


「すごいじゃないですか!すごいじゃないですか!10分も短縮!」


わはははは!


思わず二人とも笑い出した。



するとシロノさんの腹が痙り始めた。


いたたたた!わははははは!



今度は私の足首とふくらはぎと太ももが痙り始めた。


わはははははははは!

しばらく二人で笑い転げた。



自己新記録で完走し満足した私。残念なことに途中棄権となり収容されたシロノさん。


実は何も変らない。


対照的な結果であったにもかかわらず、ふたりで腹を捩りながら笑った。ただ結果だけを付け合わせたのならば、そういう風にならないだろう。


結果はオマケみたいなもの。


結果はどうあれ、二人の奥底に流れているものは何も変らないのだ。




それが証拠に、明日になれば二人とも「また走りたい」そう言うに決まっているのだから。
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しま・しま

Author:しま・しま
土からつくるここだけ芋焼酎「たばらそだちプロジェクト」を立ち上げました。土と食、命がつながるといいなと思います。

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