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2010-08-13

ぶどう二粒

私には、認知症で病院に入院している祖母がいる。


「ああ、あんたが来てくれたかい。ちょうど良かった。あたしは家に帰ろうと思いよったとこやったんよ。」


こちらから声をかけると、決まってそう言う。

もう、私の事は早くに忘れてしまった。

声をかけてくる見舞いの人には同じように、きらきらした笑顔でこう言う。


やっぱり家に帰りたいんだな。

他に病気もあるし、家に看病する人員もいない。

帰ってきてほしいのはやまやまなのだが、状況が許さない。

毎度毎度、我が母にそう訴えられている父は、その事があまりに切ない様子で、見舞いに行きたがらなくなってしまった。

祖母は、言っているはしから忘れているので、責めているつもりはないのだが、聞いている方はつらくなってしまうのだ。


彼女はぶどうが大好物。

一房くらい、ぺろりと食べていた。


この時期、ぶどうの直売は猫の手を借りたい程に忙しい。

しかし、明日からお盆だし、前に顔を見せに行ってから間が開いたから、行こう、と腰を上げた。

思い立ったが吉日。

ぶどうの直売の合間を見て、父と見舞いに行った。


紙袋にぶどうを一房忍ばせた。

入院しているのだから、外部から食べ物は御法度だ。

ばれないようにして持ち込んだ。


病室に入ると彼女は居なかった。

ちょうどこれから夕食という時間。

彼女は食堂にちょこんと腰掛けて、テレビを見ていた。

来たよ。


そう声をかけると、留守番をしなきゃいけないから家に帰る、と言い出した彼女に父は、

「家の事は大丈夫だから、もう少しここでゆっくりしておき。」

と、なだめた。


何度も何度も同じことを繰り返す祖母に紙袋からぶどうを一粒手渡すと、きらりと顔が輝いた。

ここでぶどうを食べることがいけない事だと察しているようで、きょろきょろとあたりを見てからぱくりと口に運び、もぐもぐもぐと食べた。


父が皮と種を出すように手を口の前に出しても、暫し我が家のぶどうを堪能しているようで、なかなかもぐもぐを止めない。

ゆっくりと味わったらいいよ。


しっかりと噛みしだいてから、皮と種を出した。


なにか思いだしたのかな。


もう一粒。


思い出すよな、ばあちゃん。




「おいしかった。」

廊下から夕食が運ばれてくる。


そこで電話がなった。

「ぶどうがなくなったから、ちぎって来て。大至急!」


ぶどうの直売所からだ。


また来るね。


「ありがとう。おいしかった。」


また来るからね。


ごめん、ばあちゃん。
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ありがとうございました

先日は環境フェスタへのお返事のコメントをありがとうございました。
お忙しい時期だと思いながらお知らせしました。
どうぞお気にされませんように。

でもスイートポテト、めっちゃおいしそうですね!、そしていきなりだんごは、仲間分を小郡市にあるお饅頭屋さんへまとめて何十個も買い出しに行くほど私たちの鉄板アイテムです。食べられないことは、とても残念です!!

おばあさまにブドウを届けてあげてよかったですね。すごく、すごく幸せな時間だったと思います。味や香りは深く記憶に刻まれますね。私も桃が好きだった祖母に同じようなことをしたので、嬉しそうに食べてくれた祖母を思い出しました。

屋外で作業やスポーツ、暑さもまだまだ厳しいのでくれぐれもお体に気を付けてください。


エ・コラボ様へ

だいぶ風に秋の気配が感じられるようになりましたね(^_^)

今となっては、自己満足なのかもしれませんが、できることはやってあげたいなと思います。
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しま・しま

Author:しま・しま
土からつくるここだけ芋焼酎「たばらそだちプロジェクト」を立ち上げました。土と食、命がつながるといいなと思います。

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