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2008-08-04

二つの試合

少し前から息子が何やら妻にごにょごにょ言っている。

どうやら、中学の部活で始めたバドミントンとテコンドーの両立がキツいので、テコンドーを止めたくなったようだ。

初段とったし、試合で何度か優勝もした。

父親としては、別にやめてもいいと思っている。

あまり格闘技に向いている方ではない。

4歳で始めてから8年間、嫌がりもせずよく頑張ったなと感心している。


父親が師範というプレッシャーもあったろう。


昨年初段を取った。

初段は帯の色こそ黒いが、武道へのほんの入り口に過ぎない。

人の「道」としての武道はここから始まるのである。


親として、入り口までは付き合ってやった。


ここから入り口の扉を開けるかどうかは彼が決めればいい。


そう思っている。


息子は妻にその話を頻繁にしているようなのだが、私には未だ話さない。

コワいのか、他にワケがあるのか知らないが、どちらにしろ私に打ち明けない理由は彼の中にある。


試合当日。


セコンドは私がついた。

コールを聞いて控え席に座っていると、沈黙を破ったのは私。

セコンドとして相手選手のクセとその対応と攻め方を伝えた。

息子は頷き、コートを見つめた。



再びの沈黙を破ったのは息子。


「お父さん」

いつもの妙なイントネーションで私を呼んだ。


「お父さん、僕、この試合で優勝したら引退する。」


そうか。やめるか。


それもよかろう。


心は揺れない。


「なら、頑張れ。目の前の試合に集中せ」


去年の試合で負けた相手。


2ラウンド、両者0点のまま延長へ。


延長ラウンド、前半うかつにも失点。


スコアボードには1が点灯。


いい形にはなるのだがなかなか得点できず、外野にいた後輩指導員までが声を荒げて指示を出した。


彼は笑っていた。


相手との蹴りの駆け引きを楽しんでいるような、試合を楽しんでいるような表情をしていた。


1分をきってから、上段に一撃。


蹴りがきれいにヒットした。


上段は2ポイント。


その差のまま、タイムアップ。




息子は優勝した。


私が親として彼に渡せるもののひとつ。


しかと渡した。



受け取れ。
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Author:しま・しま
土からつくるここだけ芋焼酎「たばらそだちプロジェクト」を立ち上げました。土と食、命がつながるといいなと思います。

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